飲食店のアルバイトの賃金はいくらにすべき?
アルバイトの給料に迷っていませんか?適正な賃金を決定するために考慮すべきポイントとは?
この数年続いていたコロナ禍から少しづつ日常が戻り、いよいよ本格的なアフターコロナ時代を迎えようとしています。忍耐を強いられていた飲食業界にも明るい兆しが見え始め、ここにきて事業拡大や新規開店に向けて、新たなアルバイトスタッフの採用を検討されている経営者やオーナーの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
しかし、いざ採用に着手するとなると、時給をいくらにするか迷うところでしょう。賃金は応募動機の大きなポイントであるものの、経営の視点からは人件費の割合も気になるところです。 アルバイトの賃金はどのように決めれば良いのでしょう?その目安となるルールや考え方についてご紹介していきたいと思います。
目次
1.飲食店のアルバイトの「最低賃金」はいくら?
時給は法律で決められた最低ラインの金額以上であれば、雇用主が自由に設定できるものですが、現実的には相場というものが存在します。
① 地域別最低賃金
賃金には最低賃金制度という法律があります。時給を決めるにあたっては、必ず国で定めた「最低賃金」を上回る金額を設定しなくてはなりません。
最低賃金には都道府県ごとに設定される『地域別最低賃金』と、特定の産業に対して適用される『特定最低賃金』の2種類がありますが、ここでは飲食店に適用される『地域別最低賃金』について見ていきましょう。
地域別最低賃金は各地域の生活水準や経済状況などを判断基準に、47都道府県それぞれで異なる金額を設定しています。これは雇用形態に関係なく、パートやアルバイト従業員にも適用されます。
設定時給が最低賃金を下回ると法律違反として罰則が課せられるだけでなく、従業員とのトラブルに発展したり、求人掲載が出来なくなることもあります。時給を決めるにあたっては、店舗のある地域の最低賃金を必ず確認するようにしましょう。
地域によって日程にずれはありますが、金額の改定は毎年10月頃に実施されます。その時期には引き上げ額がいくらなのかを確認し、下回ってしまった場合にはきちんと対応していきましょう。
*全国の最低賃金は厚生労働省のHPに掲載されています。
② 店舗業態や地域で違う賃金
飲食店のアルバイトと一口に言っても、居酒屋、カフェ、レストランなど様々な業態の店舗があり、時給の相場はそれぞれで違います。どういったスタイルの飲食店なのかといった点も、時給決定におけるポイントの一つです。カフェやレストランに比べると、お酒の提供を伴う居酒屋やバーは総じて高めに設定されています。
時給の差は地域性にも関係があります。集客率の良い都心の繁華街やオフィス街では、やはり高い時給が散見されます。
また上記に加えて、近隣・同業者の時給相場や労働市場の動向を把握しておくことも大切でしょう。周りの店との時給差が大きければ応募が見込めませんし、労働市場が売り手市場なのか買い手市場なのかといった状況によっても対応が変わってきます。
こうした様々な状況を総合的に見て、適正と思われる時給を設定することが肝要です。
[Bar]
[居酒屋]
[カフェ]
③ 最低賃金の落とし穴
「最低賃金」の定義には、じつはちょっとした落とし穴があります。
最低賃金は基本給と諸手当(除外対象の手当あり)に対して適用されるため、正確な時間額*を計算してみると、給与の支払い形態によっては最低賃金を満たしていない場合があるのです。
支払い形態別に時間額の計算方法をご説明します。設定する時給の時間額が最低賃金を下回っていないか確認してみましょう。
時給での支払いは、単純に設定する時給額がその地域の最低賃金を超えているかを確認します。
時給 ≧ 最低賃金額(時間額)
例)時給1,000円 = 時間額1,000円
日給を一日の所定労働時間で割った金額で判断します。日給に交通費を含んで時給を設定すると、最低賃金を下回る可能性があるので注意しましょう。
日給 ÷ 1日の所定労働時間 ≧ 最低賃金額(時間額)
例)日給8,000円 ÷ 所定労働時間8時間 = 時間額1,000円
Question
交通費を含んだ日給には要注意!?
交通費は最低賃金の適用対象外の手当です。そのため時間額を出す際には、日給から交通費を差し引いた金額を賃金額として計算しなくてはなりません。この点を考慮しないで日給を設定すると、以下のように最低賃金を下回る場合があります。
例)
- 最低賃金が1,000円の地域
- 労働時間8時間
- 日給8,000円(交通費800円を含む)
(日給8,000円 - 交通費800円)÷ 所定労働時間8時間 = 時間額900円
2.アルバイトに支給する手当には何がある?
アルバイト雇用でも労働状況によっては、様々な手当を付与して賃金を支払う必要があります。
手当にかかる費用は経営のひっ迫に影響する可能性もあるので、時給設定の際には諸手当の存在も考慮しておくとよいでしょう。
では、具体的にアルバイト雇用にはどのような手当が発生するのでしょうか?
① 時間外手当
手当には労働基準法で支払い義務が定められた「法定手当」と、支払い義務のない「法定外手当」があります。
時間外手当は法定手当にあたるため、法定労働時間(休憩時間を除く1日8時間以上、または1週間40時間以上)を超える労働を行った場合には、法定労働時間を超える時間に対して1.25倍の割増賃金を支払わなくてはなりません。
ちなみに60時間を超える時間外労働については、1.5倍以上の割増賃金が課せられるので、過度な超過がないよう従業員の労働時間を把握しておくことが肝要です。
「割増賃金 = 通常の賃金 × 1.25」
② 深夜手当(早朝手当)
午後10時から午前5時における時間帯の労働は深夜労働にあたり、通常賃金の1.25倍の割増賃金を深夜手当として支払うことが義務づけられています。深夜手当も労働基準法で定められた法定手当で、支払いを怠ると罰則の対象となります。
「割増賃金 = 通常の賃金 × 1.25」
③ 通勤手当
手当の中には労働基準法で支払いが義務付けられていない「法定外手当」もあります。
通勤手当は法定外手当ですが、通常多くの店舗が通勤にかかる電車代やガソリン代などを手当として支払っています。原則的に通勤手当は非課税ですが、交通機関使用で月額15万円を超えた場合に限り、課税対象となります。
④ 有給休暇手当
アルバイト従業員も次の条件を満たしている場合は、有給休暇付与の対象となります。
- 全労働日の80%以上を出勤
- 6カ月以上の継続雇用
有給休暇は賃金が発生する休暇のため、従業員が有給休暇を取得した場合、雇用主は出勤日数として賃金を支払わなくてはなりません。
所定労働時間が週30時間以上、あるいは週5日以上勤務している場合は年に10日間、その基準に満たない場合でも1~7日以上の有給休暇を与えることになっています。また、2019年4月の法改正で年10日間以上有給休暇が付与される従業員に対し、年5日間の取得が義務付けられました。有給休暇の取得状況についても把握し、未取得である場合は従業員に取得を促すようにしましょう。
アルバイトが有給休暇を取得した際の賃金の計算方法は3つあります。
通常賃金による計算
所定労働時間が決まっているのか、シフト制なのかなど就業条件によって多少異なりますが、基本的な考え方としては勤務した場合に支払う賃金を計算します。
- 時給制 → 時給 × 所定労働時間 or 勤務予定シフトの時間分
- 日給制 → 日額
- 週給または月給制 → 週給(月給)÷ その週(月)の所定労働日数
平均賃金による計算
労働基準法に基づいて算出した金額を有給休暇の賃金とする方法です。計算は2種類あり、どちらか高い方を適用します。
- 過去3ヶ月間に支払われた賃金の総額 ÷ その期間の総日数
- 過去3ヶ月間に支払われた賃金の総額 ÷ その期間の実労働日数の60%
標準報酬日額による計算
標準報酬月額を日割り計算する方法で、アルバイト従業員が健康保険に加入している場合は、この方法でも算出できます。ただし、この方法は通常賃金や平均賃金をもとに算出した場合より安くなる可能性があるので、これを用いる場合には労使協定を結ぶ必要があります。
「標準報酬月額 ÷ 30」
【アルバイトの標準報酬月額の算定方法】
支払基礎日数 | 標準報酬月額の決定方法 |
---|---|
4~6月の3ヶ月とも支払基礎日数が17日以上ある | 3ヶ月の報酬月額の平均額をもとに決定 |
4~6月の3ヶ月のうち、1ヶ月でも支払基礎日数が17日以上ある | 17日以上の月の報酬月額の平均額をもとに決定 |
4~6月の3ヶ月のうち、3ヶ月とも15日以上17日未満 | 3ヶ月の報酬月額の平均額をもとに決定 |
1ヶ月又は2ヶ月は15日以上17日未満(ただし、1ヶ月でも17日以上ある場合は除く) | 15日以上17日未満の月の報酬月額の平均額をもとに決定 |
4~6月の3ヶ月とも15日未満の場合 | 従前の標準報酬月額で決定 |
飲食店では通常賃金による計算では難しいケースが多いかもしれません。その場合には、平均賃金か標準報酬日額のいずれかの方法で計算しましょう。
3. 適正な賃金でアルバイトを雇用するために!給与計算や各種手当の管理ができる「ジョブルポ」
従業員の勤怠管理、給与支払いにおける諸手当の計算。アルバイトに適正な賃金を支払うためには、そうした複雑で面倒な業務を開店時間の合間を使って、ミスなく行わなければなりません。
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監修:篠崎 拓也
社会保険労務士(第13200519号)
篠崎社会保険労務士事務所 代表
成蹊大学法学部卒業後、大手旅行会社へ入社。募集型企画旅行の手配、企画業務を担う。その後、神奈川県内にある社会保険労務士法人へ転職し社会保険労務士資格を取得。
800名規模の小売業、50名規模の外資系企業など8社の労務相談、就業規則アドバイス、給与計算などを担当する。
その後、精密部品機器の人事を経て現職のプライム上場グループ、シェアードサービス会社へ入社。
社会保険労務士事務所運営と、民間企業の人事部門管理職を兼任し、労務相談、就業規則作成のアドバイス、人材マネジメントと幅広く活動中。
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