税理士なしで法人決算!?自分でやる注意点
法人決算、税理士に頼まず自分でやっても大丈夫?

会社を設立し、いよいよ初めての決算を迎える経営者の中には、コストを抑えるために税理士に依頼せず自分で決算申告をしようと考える方も少なくありません。確かに、最近は会計ソフトの普及により、知識があればある程度自力で対応できる環境も整ってきています。
しかし、法人決算・法人税申告には「独特のルール」や「見えにくいリスク」が存在します。本記事では、税理士に依頼せずに自力で法人決算を進めようとする際のメリット・デメリットや注意点を解説していきます。
目次
税理士なしで決算することは可能か?
結論から言えば、「可能」です。税理士に依頼することは法律で義務付けられているわけではありません。実際、法人税の申告書類は、会計ソフトで簡単に作成することができます。
しかし、会計ソフトは「入力されたデータ」をもとに決算資料を作成します。もし入力されたデータにミスがあった場合、決算書にも誤った情報が反映されます。
自動出力=正確な決算ではない、という点に注意が必要です。
自分で決算・申告するメリット
コスト削減
最大のメリットはコストを抑えられること。税理士に依頼した場合、決算申告だけでも5万円〜15万円、顧問契約を含めると年間20万円〜30万円程度が相場です。設立間もない企業にとっては、この出費は大きな負担に感じられるでしょう。
会計への理解が深まる
自分で帳簿をつけ、申告書を作成することで、会計の基本や自社の財務状況への理解が深まります。将来的に財務戦略を立てたり、経営判断をする上での力になります。
自分で決算する際の注意点とリスク
ここからが本題です。自力で決算・申告を進めるには、数多くの落とし穴があります。
申告書のミスや漏れ
法人税の申告書は複雑です。別表一つとっても多くの種類があり、それぞれ自社の状況に応じて作成する必要があります。記入ミスや添付書類の漏れがあると、税務署からの問い合わせや修正申告が必要になる場合もあります。
参考:国税庁「令和7年4月以降に提供した法人税等各種別表関係(令和7年4月1日以後終了事業年度等分)」
税制改正への対応
法人税制は毎年のように改正されます。知らずに旧制度のルールで処理してしまうと、申告ミスにつながります。税理士はこうした改正にも常にアンテナを張っていますが、経営者がそれを常にキャッチアップするのは容易ではありません。
節税の機会を逃す
自力で申告を行うと、節税のアドバイスや判断が得られないことが多く、結果として「本来払わなくてよい税金まで支払ってしまった」という事態になりかねません。たとえば「減価償却の任意償却」「役員報酬の決定タイミング」「交際費の限度額」などは節税の重要なポイントです。
税務調査のリスク
記帳ミスや誤った処理が積み重なった結果、税務調査で指摘を受け、多額の追徴課税を課されることもあります。申告が正確であることに対する「第三者の保証」がないため、税務署側も慎重にチェックする可能性があります。
決算業務に必要な主な作業一覧
自力で決算を行う場合、下記のような作業が必要となります。
- 記帳の締め作業
- 月次処理をまとめ、年間の帳簿を完成させる
- 減価償却の計算
- 固定資産の償却額を計算し、帳簿に反映
- 決算整理仕訳
- 売上未収・費用未払などの期末調整を記帳
- 決算書の作成
- 貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書などを作成
- 法人税等の申告書作成
- 法人税・消費税・地方税等の各種申告書を作成し提出
- 添付書類の準備
- 勘定科目内訳明細書、法人事業概況説明書などを作成
- 税金の納付
- 指定期限までに各種税金を納付
これらすべてを理解し、正確に行うには会計知識と時間が必要です。
自力申告に向いているのはどんな人?
以下のような条件を満たす場合、自力での決算も選択肢になります。
- 会計・税務に関する基礎知識がある
- 会計ソフトを使いこなせる
- 取引が少ない
- 時間にある程度余裕がある
- 税務リスクを自己責任で負える覚悟がある
まとめ|自力申告は慎重に。迷うなら一度相談を!
税理士に頼らずに法人決算を行うことは可能です。しかし、そこには「知識不足による申告ミス」や「将来的な税務リスク」という見えにくいハードルが潜んでいます。
創業期のコスト削減は大切ですが、「知らなかった」が致命傷になりかねないのが税務の世界です。まずは「自分でやれる範囲」と「税理士に任せるべき範囲」を整理して、賢く負担を分散させましょう。
