飲食店のアルバイト給料計算を徹底解説!各種手当や注意点まで

『時給×労働時間』だけではない!?アルバイトの給料計算

アルバイトの給料計算

アルバイトの給与というと、『時給×勤務時間』で計算できるのでは?というイメージを持たれている方も多いのではないでしょうか?しかし、実際にはそれほど単純な計算式で出せるものではありません。

アルバイトでも場合によっては、社会保険の控除や諸手当の付与を行う必要があり、これらの計算は案外手間がかかります。シフトが複雑で残業が多く、遅い時間まで営業することも稀でない飲食店においては、なおさら大変な作業だと思います。

アルバイトの給料計算はどのような点に気を付けて行えばよいのでしょうか?
各種手当や注意点について詳しく見ていきましょう。

1.アルバイトの給料計算に必要なもの

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給料計算を行うにあたっては、事前に準備しておかなければならないものがあります。まずは以下の4点がわかる書類などを揃えて、確認しながら給料計算を始めましょう

① 従業員情報

1.時給
2.家族構成
(扶養家族の有無)
・月収88,000円以上で扶養家族が0人の場合、源泉所得税を徴収。扶養家族がいれば人数に応じて控除が適用される場合あり。
・月収88,000円以下であっても「扶養控除等申告書」を提出していない場合、課税対象となる。
3.住所 通勤手当の算出に必要。転居の場合には交通費が変わることもあるので、転居情報を把握しておく。
4.勤続年数・役職 勤続年数や役職によって基本給が決まっている場合あり。

② タイムカード(勤務記録)

時給制のアルバイトの場合、勤務時間がわからなくては給料計算を行うことはできません。タイムカードやシフト表などの労働記録を基に、勤務時間を確認します。

飲食店ではシフトが複雑なことも多く、従業員の勤怠管理は手間のかかる業務でしょう。しかし勤怠が正確に把握できないと給与額のミスに繋がり、従業員とのトラブルにも発展しかねません。

タイムカード

最近では手軽に勤怠管理が行えるクラウドシステムも充実してきています。バックヤード業務の軽減のために、そうしたシステムを利用してみるのもよいでしょう。

③ 就業規則

始業・終業時間や休日に関するルールなど、従業員の労働条件をまとめた書類を就業規則といいます。アルバイトを含め常時10人以上の従業員が在籍している場合、就業規則の作成と所轄労働基準監督署への提出が労働基準法で義務づけられています。

就業規則

就業規則では以下の内容について必ず記載しなくてはなりません。

  • 労働時間(始業と終業時刻、休憩時間、休日など)に関する規定(必須記載事項)
  • 賃金(締日、支払日、残業代、割増率、昇給など)に関する規定(必須記載事項)
  • 減給や賞罰に関する規定(店舗で制定できる任意事項)

給料計算は就業規則に則て行うのが原則です。就業規則の内容をきちんと理解したうえで給与を計算しましょう。

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④ 給与規定

給与に関するルールは就業規則の中でも特に重要な部分であるため、膨大になることがあります。そうした場合には、就業規則の一部として切り離した『給与規定』を作成することができます。
給与規定がある場合には、就業規則同様に必ず確認してから給料計算を行いましょう。

給与に関する規定が細かく定められている飲食店は従業員の安心感にも繋がり、従業員からの信頼が得られることでしょう。従業員の定着や、求人募集における効果も期待できます。
従業員が10人以下の場合、就業規則作成の義務はありませんが、賃金のトラブル回避の観点からも就業規則は作成しておくことをお勧めします。

2.アルバイトの給料計算方法

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準備が整ったら、給与額を出していきましょう。どのように計算するのか、実際の手順に従って流れをご説明します。

手順1.勤務時間を集計する

シフト表やタイムカードなど勤怠を管理しているものを基に、勤務時間を集計します。
この時、気を付けなければいけないのが、勤務時間は以下のように分けられる点です。

  1. 通常労働
  2. 時間外労働
  3. 休日労働
  4. 深夜労働

1は規定の時給をそのまま掛けるだけですが、2~4は割増賃金を付与する必要があるため、それぞれの労働のおける勤務時間を集計しなくてはなりません。

手順2.支給額を決定する

勤務時間の集計が出来たら支給額を計算します。ここでいう支給額とは基本給、割増賃金、諸手当の合計額のことです。いわゆる額面と呼ばれる金額で、税金や社会保険料を差し引く前の総支給額を指します。割増賃金や手当が必要な場合は、それも含めて支給額を出しましょう。

支給額 = 基本給 + 割増賃金 + 諸手当

基本給 通常の労働勤務。時給×勤務時間で算出。
割増賃金 時間外労働、休日労働、深夜労働に対して支払われる法定手当。
➞ 割増賃金の計算方法はこちら
諸手当 雇い主が任意で定める法定外手当。通勤手当、繁忙期手当(例:土日の時給アップ)など。

手順3.控除を行う

勤務状態によっては、以下に示した社会保険への加入や課税の義務が生じることがあります。その場合には控除額を出して、支給額から差し引かなければなりません。

  1. 社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、介護保険料)
  2. 税金(所得税、住民税)

控除は種類も多く、適用される条件や計算ルールが異なるため、注意が必要です。適用となる条件や、各控除の概要・計算方法などを簡単にまとめましたので、下の表で確認してみましょう。

適用となる条件 概要・注意点 計算方法*1
健康保険料・
厚生年金保険料
・週の所定労働時間かつ1ヶ月の所定労働日数が、常勤している正社員の4分の3以上である。*2

※ 例外として、社会保険加入者が101名以上の事業所の場合、以下の条件を満たす従業員も対象となります。
・1週間の所定労働時間が20時間以上である
・2ヶ月以上の雇用期間が見込まれる
・月収88,000円以上
・学生でないこと
会社と従業員が折半して支払う。 標準報酬月額×保険料率÷2
雇用保険料 ・1週間の所定労働時間が20時間以上である
・31日以上の雇用期間が見込まれる
・月収88,000円以上
会社と従業員が、それぞれで負担する公的保険。 賃金×0.006
※一般事業の場合
介護保険料 40歳以上65歳未満の従業員 会社と従業員が折半して支払う。 標準報酬月額×保険料率÷2
源泉所得税 ・月収88,000円以上*3
・月収88,000円以下であっても「扶養控除等申告書」を提出していない場合は課税対象
家庭を持っている従業員に限っては、配偶者控除・扶養控除ともに条件を満たせば、最大38万円が控除される。
※ 70歳以上の配偶者は48万円の控除が受けられる可能性があります。
・課税対象額(給与-社会保険料等)を、源泉徴収税額表にて照合する
・月払いは月額表、日払いは日額表で確認
住民税 ・年収93万~100万円以上 (自治体によって異なる) 毎年5月に届く納付書に記載された金額を引用

*1:計算方法や税額表は国税庁のHPで公開されています。
*2:2024年10月の法改正で、『短時間労働者を除く社会保険加入者が常時51人以上である事業所』に適用範囲が拡大される予定です。
*3:月収88,000円以上で源泉徴収をした月があっても年間給与額が103万円以下であれば、天引きした額を年末調整で還付する必要があります。

3.アルバイトの割増賃金はどう計算する?

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準割増賃金の発生するケースについて詳しくご紹介していきましょう。

時間外労働(残業手当)

労働基準法では1日の労働時間を8時間、1週間の労働時間の上限を40時間と定めています。これを超える労働には、40時間を超えた労働時間に対して割増賃金が発生します。

割増賃金は通常賃金の1.25倍以上です。ちなみに60時間を超える時間外労働については、通常賃金の1.5倍以上の割増賃金を支払う義務があります。

割増賃金=通常の賃金×1.25

計算例

時給1000円/所定労働時間7時間+残業3時間労働した場合
所定労働時間7時間、8時間以内の残業1時間、8時間を超える残業2時間
(1000円×7時間)+(1000円×1時間)+(1000円×1.25×2時間)=10,500円

Question
これは時間外労働に当たる?

1日の規定の労働時間を7時間としている場合に1時間の残業を行った
1日の労働時間が8時間を超えていないので、割増賃金の対象にはなりません。

休日労働

アルバイトの場合、シフト制となっていることが多いかと思いますが、欠勤や繁忙時のヘルプなどで予定外の出勤を依頼することもあるかと思います。

本来、休日である時に出勤した場合、通常労働ではなく休日労働として扱われます。
労働基準法では週1日または4週を通して4日を法定休日として、従業員に休みを与えることを義務付けています。しかしこの規定が遵守されなかった場合、休日労働の労働については通常賃金の1.35倍の割増賃金を支払わなくてはなりません。

「割増賃金=通常の賃金×1.35」

計算例

時給1000円/1日8時間・週5日のシフト勤務+1日(8時間)追加勤務した場合
1000円×1.35×8時間=10,800円

Question
これは休日労働になる?

1日8時間・週3日のシフト勤務をしている人が、ある週にもう1日(8時間)勤務した
週40時間以内の労働、週1日以上の休日の確保という条件を満たしているので、本来は休日であった日に勤務したとしても休日労働にはならず、割増賃金も発生しません。

1日8時間・週5日シフト勤務の人が、同じ週の中でもう1日(8時間)勤務した
➡週1日の休日は確保できるので休日労働にはなりません。ただし、40時間を超える部分の勤務時間については時間外労働になるので、1.25倍の割増が必要です。

深夜手当

深夜労働とは午後10時から午前5時における時間帯の労働をいいます。

労働基準法で深夜労働は日中の勤務より高い賃金を設定することが定められており、通常賃金の1.25倍の割増賃金を支払うことが義務づけられています。

「割増賃金=通常の賃金×1.25」

計算例

時給1000円/午後10時~翌日5時まで7時間勤務した場合
1000円×1.25×7時間=8,750円

Question
割増賃金は重複する?

深夜勤務で時間外労働が発生したり、勤務日が休日労働だったり…。
このように時間外労働・休日労働・深夜労働の2つ以上が該当する場合、割増賃金は重複して加算しなくてはなりません。ただし休日労働と時間外労働が重なった場合は例外です。法定休日には法定労働時間がないので、休日労働では時間外労働の割増賃金はないからです。

  • 深夜労働(1.25倍)+ 時間外労働(1.25倍)➡ 1.5倍の割増賃金
  • 深夜労働(1.25倍)+ 休日労働(1.35倍)➡ 1.6倍の割増賃金

4.その他、注意点

時給は何分単位で計算する?

給料計算に必要となる勤務時間を15分単位などで集計されてはいないでしょうか?
例えば15分単位で15分に満たない分数を切り捨てることは違法に当たります。労働時間は1分単位で集計するのが原則です。

時間外手当や休日労働は、働いたすべての時間に対して賃金を支払わなくてはいけません。超過時間が1分であっても切り捨てることは原則認められませんが、じつは例外もあります。1ヶ月の労働時間の通算で30分未満の端数が出た場合は切り捨て、30分以上の端数は1時間に切り上げての処理を行うことは問題ありません。

アルバイトの休憩時間は給料に含まれる?

アルバイトの休憩時間は労働時間として扱われないため、時給は発生いたしません。これは労働基準法で定められている事項です。

同様に労働基準法では休憩時間について、6時間を超える勤務では45分以上、8時間を超える勤務であれば1時間以上の休憩時間を与えることが定められています。休憩時間が入る勤務では、総労働時間から休憩時間を引いた時間が労働時間として時給支払いの対象となります。

計算例

時給1000円/7時間労働した場合
労働時間7時間-休憩時間45分=労働時間6時間15分
1000円×6時間15分=6,150円

5.面倒な給料計算は自動化できる!
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アルバイトの稼働率が高く、シフトも複雑な飲食店の給料計算は、思った以上に労力の必要な作業で、大きな負担を感じておられる経営者の方も多いのではないでしょうか?

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監修:篠崎 拓也

社会保険労務士(第13200519号)

篠崎社会保険労務士事務所 代表
成蹊大学法学部卒業後、大手旅行会社へ入社。募集型企画旅行の手配、企画業務を担う。その後、神奈川県内にある社会保険労務士法人へ転職し社会保険労務士資格を取得。
800名規模の小売業、50名規模の外資系企業など8社の労務相談、就業規則アドバイス、給与計算などを担当する。
その後、精密部品機器の人事を経て現職のプライム上場グループ、シェアードサービス会社へ入社。
社会保険労務士事務所運営と、民間企業の人事部門管理職を兼任し、労務相談、就業規則作成のアドバイス、人材マネジメントと幅広く活動中。

篠崎 拓也

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